Winter Time26

back  next  top  Novels


「小宮選手には出演を快諾していただきましたので、ゲストは小宮選手と今年メジャーで大活躍だった高城選手。それからスポーツコラムニストの二村さん」
「小宮なんか、メジャー行ってまともにやれるのか? いい年じゃねーか。今年三十本しか打ってねーし、ホームランバッターとしちゃ、ま、通用しねーな」
 小宮に出演OKの返事をもらえて意気込んで報告する良太にまたライターの大山が突っ込みを入れる。
 『パワスポ』の会議では既に見慣れた風景になっている。
「高城なんか、ただキャラクターでもったんだろ? 来年の今頃はやつの名前なんかどこにもないんじゃねぇの?」
 このやろー、と思うが、良太はそこを抑えて相手にしない。
 そうでないと会議も進まない。
「冬季オリンピック特集の方は、スピードスケートの西川選手と柴田選手の密着取材、二人とも怪我だ何だとあってからの復活というところで、逆に皆の期待の目を集めたいと考えています」
 穏やかなディレクターの殿村が、さりげなく話題を変える。
「ま、メダルはフィギュアくらいっきゃ全く期待できないけどな。ジャンプ陣もてんで振るわないし、若いやつなんか出てきやしねぇ。ノルディックなんか話になんないし」
「続けていくってところに意義があるって思います。選ばれた人だからこそのがんばりを視聴者に見てもらいたいですね」
 先頃禁煙になったため、火のついていない煙草をくわえながらふんぞり返る大山に、良太は反論する。
「あとは何といっても、ワールドカップだな」
 殿村がまた二人を抑えるように、口を挟むと、良太もちょっと自分を落ち着ける。
「はい。Jリーグの選手だけでなく、各国の有力選手のデータを今集めているところです」
 良太は持参した資料をスタッフに配り、詳細を説明し始めた。
 
  

 

 
 
 画面がキャスターの顔からVTRに切り替わると、オンエアのようすを見ていた工藤に、ADがコーヒーを持ってきたが、その苦々しい表情に臆して怯えるように素早く去っていく。
「最近良太ちゃんを隠してるんだって?」
 カップを掴んだまま、工藤がスタジオから廊下に出ると、後ろから聞き慣れた声がした。
「バカバカしい」
 工藤は下柳の言葉を一言で切り捨てる。
「ここんとこ、俺も良太ちゃんの顔見てないぞ」
 くわえ煙草でニヤニヤと下柳は無精ひげをさする。
「そんなに見たけりゃ、会議室に行け」
 煙草をくわえながら、工藤は眉を顰める。
 話す時間もとれないのはこっちだ。
 時間がないと、良太の今夜の予定というのがまた妙に気になってくる。
「ああ、『パワスポ』? あれもまあまあの視聴率じゃねぇか。がんばってんね、良太ちゃん、タレントでもいけそうだし、どうすんの?」
 感情を逆撫でするような下柳の言い方に、工藤は苦々しい顔をさらに顰める。
「人の心配より、自分の身の振り方でも考えろ。売れないドキュメントばっか追っかけてると、そのうちどこでも使ってもらえなくなるぞ」

 


back  next  top  Novels